「LinuxユーザーはMicrosoftに借りがある」、バルマー氏が明言

 米MicrosoftのCEOスティーブ・バルマー氏は11月16日、Linux OSはMicrosoftの知的財産を侵害しているとの見解を示した。これは、オープンソース・コミュニティの懸念を裏付ける発言だ。

 バルマー氏はシアトルで開催された「Professional Association for SQL Server(PASS)」コンファレンスで行った基調講演後の質疑応答の中で、Microsoftが今月初めにSUSE Linuxを提供するNovellと提携した理由について、「われわれの知的財産がLinuxに利用されており、Microsoftは株主のために、自社のイノベーションの適切な経済的見返りを確保したいと考えた」と説明した。

 NovellとMicrosoftは、11月2日に発表した提携の下、両社の競合ソフトウェア製品の相互運用性向上に取り組むことになっている。またマイクロソフトは、自社の顧客がSUSE Linuxに関する保守やサポートを受けられるようにするなどの目的で、Novellに4億4,000万ドルを支払う。さらに、MicrosoftはLinuxも利用したいと考えるWindowsユーザーにSUSEソフトウェアを推奨することでも同意している。

 今回のバルマー氏の発言によって、提携に含まれている「NovellがMicrosoftに4,000万ドルを支払い、MicrosoftはSUSE Linuxユーザーを特許侵害で訴えない」という取り決めの重要性がより鮮明になったと言える。

 この取り決めでは、コードを作成してSUSE Linuxディストリビューションの開発に貢献する個人や非営利のオープンソース開発者、および同ディストリビューション用のコードを作成して報酬を得る開発者も、訴訟の対象にならないとされている。

 しかし、多くのオープンソース支持者が両社の提携を批判している。彼らの主張は、「今回の提携は、主要なLinux推進企業が特許侵害を認めたこと意味し、Microsoftが特許に関して法的措置に踏み切った場合、同社の立場を補強することにつながりかねない」というものだ。

 これまでバルマー氏を含むMicrosoftの幹部は、GPL(GNU General Public License)が適用され、世界中のプログラマーの開発成果が取り込まれているLinuxカーネルが、Microsoftの特許を侵害しているかどうかについては沈黙していた。

 しかし、バルマー氏は16日、「Novellはわれわれに資金を支払うことで、『SUSE Linuxのすべての利用者が適切に保護されている』と顧客に言える権利を手に入れることになった」とし、「これはわれわれにとって重要なことだ。こうした措置が取られなければ、基本的に、すべてのLinuxユーザーは、(特許に関して)負債があると考えざるをえない」と饒舌に語った。

 これに対し、オープンソースに関する法的問題を追っているGroklaw.netブログの編集者パメラ・ジョーンズ氏は、「バルマー氏は、FUD(恐怖、不安、疑念)をあおっているにすぎない。自分の主張が正当だと思うなら、訴訟を起こせばいい。彼の主張がMicrosoftのユーザーからも支持されていないことがわかるだろう」と反論する。

 Linuxディストリビューター最大手のRed Hatの幹部も、バルマー氏の発言を一蹴した。「われわれは、MicrosoftとNovellの提携契約の中で規定されているような関係を結ぶ必要性も、そうする根拠もないと考えている」(副法務責任者、マーク・ウェビンク氏)

 Red HatはMicrosoftが取る可能性のある法的措置について、「イノベーション税」を徴収しようとするものだと批判、「(特許侵害に関するMicrosoftの主張から)顧客を保護できる」と強調する。

 また、ジョーンズ氏は、11月2日に提携が発表された後、Novellが自社のWebサイトで、「今回の提携は、侵害行為とは一切無関係である」と説明していたことを指摘し、「どちらの言っていることが正しいのか」と皮肉っている。

 バルマー氏は16日、知的財産侵害の内容について詳しい説明はしなかった。だが同氏は、SUSE Linux以外のLinuxを利用するユーザーは、Microsoftのイノベーション成果にただ乗りしており、Linuxベンダーかユーザーか、いずれはだれかがその対価を支払わなければならないとする認識を示した。

 「SUSE Linuxを利用する顧客だけが、Microsoftの知的財産の対価を適正に支払っている。われわれはRed HatなどほかのLinuxディストリビューターとも提携することに異存はない。SUSE Linuxに関する提携は、排他的なものではない」(バルマー氏)

(エリック・レイ/Computerworld オンライン米国版)

提供:Computerworld.jp