Bob Metcalfe氏、オープンソースを再評価

 Bob Metcalfe氏はインターネットの発明こそしなかったが、Ethernetの父であり3Com社の創設者でもあり、同氏ほどインターネットの普及に技術的な貢献をした人もめずらしい。Metcalfe氏とオープンソースコミュニティは前世紀では互いにやや険悪な仲になっていたが、どうやら現在ではそれは過去のことになったようだ。

 Metcalfe氏は同氏が「オープンソース運動を共産主義になぞらえた」ことで非難の的となったことを忘れてはいない。「知っての通り、共産主義というのはソビエト連邦での70年間にわたる実験の結果、失敗した。私はオープンソース運動をそのような共産主義になぞらえたのは冗談だと後から言い添えたのだが、その後もオープンソース陣営からの、たちの悪いスラッシュドットのAnonymous Coward的な反撃は情け容赦なく続いた。幸いなことに私は神経が図太いのでどんな非難を受けても平気だったが、反撃のたちの悪さと言ったら、オープンソース運動の中身が見えたようにも私には思えたがね」。

 「とにかく今でも、当時オープンソース陣営が言っていたことに反して、LinuxがWindowsを駆逐することにはなっていない。そしてもちろん、WindowsもLinuxを駆逐してはいない。オープンソース陣営で私に対して誹謗中傷する人たちは、私がLinuxと同じくらいWindowsに対しても否定的であることを忘れがちなようだ。どちらも60年代に逆戻りしたような技術だ」。

 「オープンソースのように人的資本の組織というものが成り立つのかどうかという問題は、まだ未解決のままだ。つまりMany Core向けやモバイル向けのオペレーティングシステムのような現代的なソフトウェアは、Microsoft式の強欲なソフトウェア企業によって開発された方が優れたものになるのか、それともオープンソース式の寄せ集めの雑多なボランティアたちによって開発された方が優れたものになるのか。私はその競争を観察して、両モデルがどのように進化するのかを大いに楽しんで見させてもらっている。どちらも確かにこれまでにも進化してきたし、これからも進化していくだろう。両モデルは同じところへ集束しようとしているようにも思える」。

 Metcalfe氏は口先だけの人ではなく、実行力のある人物だ。「私が実際オープンソースを毛嫌いしてるわけではないことを証明するために言っておくと、Polaris社の私の共同経営者たちはオープンソースの支持者であるし、私自身もオープンソースLinux/MPI科学分野用高性能クラスタスーパーコンピュータベンダのSiCortex社の取締役を務めている」。

 「科学分野のHPCの人たちは、自分だけのコードを持っていて、それを動かすために再コンパイルという作業をすることも日常的なことだ。しかしソフトウェアユーザのほとんどは再コンパイルなどしないし、すべきでもないと思う」。

 Metcalfe氏は、今のところはまだオープンソースを全面的に支持しているわけではない。「私が心配しているのは、オープンソースモデルの長期的な持続可能性だ。目新しさが次第になくなり、ボランティアたちが興味を失って本業の仕事をするようになったら、誰がソフトウェアの管理をするというのだろうか」。

 つまりここ何年かの間にMetcalfe氏が反オープンソース(どうやら広く言われていたほど反オープンソースではなかったということのようだが)からオープンソース唱道者に変化したというわけではないようだが、仕事でオープンソースと関わることを厭わない程度にはオープンソースの利点と可能性に対して心を開くようになったと言っても良さそうだ。

NewsForge.com 原文