Linux対応のハードウェアをデバイスメーカに要求するPCベンダ

 ここ何年かでLinuxデスクトップの市場は、デバイスおよび周辺機器メーカにとって無視できないものになった。以前であれば、小さすぎて問題にならないと一蹴されていた市場だ。しかし、状況は変わった。先月、テキサス州オースティンで行われたLinux Foundationの会議で、大手PCベンダのASUSTek Computer、Dell、Hewlett-Packard、Lenovoは、チップセット、コンポーネント、周辺機器のOEM業者に対してLinuxに対応したハードウェアの提供を要求する、との意向を示した。

 そうした背景の1つに、サポートを求めるLinuxユーザの声の高まりがある。何百万ドルという規模の取引がある企業からの要求を、OEM業者はおろそかにはできない。

 正確にいうと、この会議で大手PCベンダが明らかしたのは、オープンソースのドライバ提供を「強く働きかける」ための文言をハードウェアの調達プロセスに含める、ということだった。そのうち数社は、さらに踏み込んだ措置を取るとの発言を非公式に行った。OEM契約の次の段階では、Linux用ドライバの構築を容易にするオープンなAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)、あるいはLinux用のドライバそのものを備えた機器の提供をOEM業者に求める文言を追加するという。

 なかには、ボードおよびチップベンダのVIA Technologiesのように、大手PCベンダからの働きかけを待たずにそうした動きに出たところもある。前述の会議でVIAは、自社のすべての機器についてドライバをオープンソース化すると発表していた。「Linux対応製品の提供 ― 次なる一手」というパネルディスカッションにおいて、VIAの社長特別補佐Timothy Chen氏は次のように語った。「VIAの取り組みは十分ではなかった…当社にとってオープンソースの受け入れは容易ではないが、月末にはその成果の一端をお見せできるだろう」

 VIAはその約束を守り、4月30日にVIA Linux Portal Web siteというWebサイトを公開した。最初の段階として、グラフィック機能統合チップセットVIA CN896向けLinux用グラフィックドライバのバイナリ(Ubuntu 8.04およびSUSE Linux Enterprise Desktop 10 SP 1向けのもの)が提供されている。同社によると、これらのドライバのドキュメントおよびソースコード、次いで正式なフォーラムやバグ管理システムも公開されるという。また、主要なLinuxディストリビューションのリリースに合わせてドライバをアップデートできるようにリリーススケジュールが組まれる予定だ。

 情報筋によれば、大手の無線チップメーカもまた、少なくともバイナリの形でLinux用ドライバを提供する予定があるという。Atheros CommunicationsBroadcom Corp.の両社の役員が、Linuxのサポート方針の変更予定について非公式な発言をしている。こうした動きのきっかけになっているのが、Linuxへの対応を求める大手PCベンダと、無線チップのLinux対応化に取り組み始めたIntelという双方の動向だ。

 また、リバースエンジニアリングによってAtherosのオープンソース・ドライバに取り組むath5Kプロジェクトの有力な開発者、Luis R. Rodriguez氏が4月15日に次のように発表したことも注目に値する。常勤のソフトウェアエンジニアとして、AtherosのあらゆるデバイスがLinuxカーネルの上流部分でサポートされるようにするという同社の目標および使命の達成に協力するためにAtherosと雇用契約を結んだというのだ。

 こうした動向が続けば、どのデバイスもLinuxに対応しているという前提でLinuxデスクトップユーザが機器を購入できる日がやがて訪れるだろう。それは、Linuxデスクトップ愛好家のだれにとってもうれしい状況だ。

Steven J. Vaughan-Nicholsは、テクノロジとそのビジネスに関する執筆活動に従事。その発端は、PC用のオペレーティングシステムとしてCP/M-80が利用され、粋な学生のコンピュータでUNIXの2BSDが動いていた頃にまで遡る。

Linux.com 原文